お墓にも引っ越しがある事をご存知でしょうか?
何らかの理由で今のお墓から別のお墓へ移る事は決して珍しいことではありません。
ちなみに、お墓の引っ越しの事は正式には「改葬」と言います。
お墓の引っ越し(改葬)を行うこと自体は特に問題ありませんが、あまり頻繁に直面する事態ではないのでなかなかその方法や費用についてご存知ない方も多いのではないでしょうか。
そこで、こちらではお墓の引っ越し(改葬)について詳しく解説していきたいと思います。
お墓の引っ越し(改葬)とは
お墓の引っ越し(改葬)は、現在入っているお墓から別のお墓や納骨堂などへ移転する事です。
お墓を引っ越すという事はあまり耳慣れない事かもしれませんが、近年お墓の管理上の問題などから、お墓の引っ越しを行う方は増えてきているのです。
では、お墓の引っ越し(改葬)をする際にはどんな事を考えなくてはならないのか、見ていきたいと思います。
改葬する理由
お墓の引っ越し(改葬)を行う主な理由は以下の3つが考えられます。
改葬の主な理由
- お墓が遠くてお墓参りが大変だし管理もしにくい
- お墓を管理してくれていた方が管理できなくなった
- 一緒のお墓に入れてあげたい
お墓参りはそう頻繁には行わないという方がほとんどだと思います。
しかし、中には気が向いた時にふらっと訪れたいという方もいらっしゃるでしょう。
また、お盆など年に数回しかお墓参りをしないにしても、お墓が遠いので時間や費用が掛かってしまうという悩みを抱えている方もいます。
他には、配偶者や親せきで別のお墓に入っている方を自分の先祖のお墓に一緒にしてあげたい、という理由でお墓の引っ越し(改葬)を行うケースも見られます。
※引用元:メモリアルアートの大野屋
主に4つのタイプの改葬がある
お墓の引っ越し(改葬)と言っても、必ず墓石と遺骨すべてを移動するかというとそうでもありません。
実際にお墓の引っ越し(改葬)をする場合には主に4つのケースがあります。
改葬の方法
- 墓石と遺骨を移動する
- 遺骨だけをすべて移動する
- 遺骨の一部だけ移動する
- 分骨する
では、それぞれのケースについて詳しくみていきます。
1.墓石と遺骨を移動する
墓石と遺骨をすべて移動する場合には、移転先のお墓に墓石の持ち込みが可能かどうかの確認が必要です。
そして、持ち込みが可能な場合でも設置する敷地に対して墓石のサイズなどが問題ないかのチェックも必要となります。
そして、すべてを移動し終わったら元のお墓は次に使用する方の為に更地にしなくてはなりません。
2.遺骨だけをすべて移動する
遺骨のみをすべて移動する際には、2パターンあります。
ひとつは移転先の墓地に新たにお墓を新設するパターンです。
この場合は、まず新しいお墓を作る事から始まります。
もう一つのパターンは既存のお墓へ遺骨を移動するパターンです。
この場合、新たにお墓を作る必要はありませんが、移転先に遺骨すべてが収まるかどうかの確認はしておきましょう。
そしていずれのパターンも移転が終わったら元のお墓は更地にします。
3.遺骨の一部だけ移動する
遺骨の一部を移動する場合は、移転先が既存のお墓なのか新たにお墓を作るのかの2パターンです。
元あったお墓にまだ他の遺骨を残す場合には、そのお墓はそのままにしておきます。
4.分骨する
分骨の場合は遺骨の一部を移動するのと同様で、既存のお墓に移動するか新たにお墓を作るかのいずれかになります。
そしてもともとのお墓もそのままにしておきます。
分骨とは
分骨とは、遺骨を分ける事です。
分骨を行う理由としては、お墓が遠いので近くにもお参りできるお墓を作りたい、手元供養を行いたいなどの場合があります。
分骨する事で遠くのお墓まで行かなくてもよくなったり、手元供養にすればいつも身近に遺骨を置いておくことができます。
分骨はいつでも行う事ができますが、分骨した遺骨をお墓に収める場合には分骨証明書が必要となります。
ちなみに、もっとも多いのは遺骨のみを移動するケースとなっているようです。
引用元:メモリアルアートの大野屋
お墓の引っ越し(改葬)に必要な手続きと費用
お墓の引っ越し(改葬)をしたいけど費用と手続き方法が気になるところですよね。
まずお墓の引っ越し(改葬)にかかる費用の相場ですが、全国の平均金額でみるとおおよそ200万円~300万円ほどとなっています。
その内訳についてはどのようになっているのでしょうか。
費用
今まで使っていたお墓
離檀料【10万円~20万円】
別のお墓に移動するという事で、完全にこれまで使っていたお墓を使わなくなる場合には、離檀料がかかるケースがあります。
ただ、この離檀料については明確な料金設定がなく、地域やお寺によっても違います。
解体費用【~50万円】
元のお墓を残さない場合には、お墓を解体して更地にする必要があります。
運搬費【10万円~20万円】
遺骨だけを移動する場合と墓石を移動する場合での違いや、移動距離によって金額が異なります。
移転先のお墓【100万円~300万円】
移転先に新たにお墓を作る場合が最も高額になります。
もし、既存のお墓に移動するのであればこれよりも費用は抑えられます。
また、移転先で初めに供養を行ってもらう場合にはその費用も加算されます。
手続きと流れ
step
1移転先のお墓探し
すでに移転先が決まっている方は手続きに進みます。
これからお墓を探すという場合は、全国各地のお墓が検索できる「お墓さがし」がおすすめです。
step
2お墓を決めて手続き
移転先のお墓を決めたら、受入証明書を発行してもらいます。
step
3建墓
移転先で新規でお墓を立てる場合には墓石の選択や区画などを決めて建墓を進めます。
step
4改葬許可申請書
これまで利用いていたお墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請書」を受け取ります。
改葬許可申請書に必要項目を記載したら、現在利用中の墓地管理先へ提出をして署名と捺印をもらいます。
再度役所へ改葬許可申請書を提出して受理されれば改葬許可証が発行されます。
step
5移転
墓石や遺骨などを搬送します。
step
6納骨
改葬許可証や墓地使用許可証を提出して新しいお墓の管理者と手続きを行い、完了すればあとは納骨するだけです。
納骨を行う際には宗教によって供養などを行う場合があります。
墓じまいと改葬の違い
墓じまいとは、お墓を管理する人がいなくなって無縁仏になってしまう前にお墓を整理する事です。
お墓を管理する人がいなくなってしまうと、最終的にはお墓は撤去されてしまい、中の遺骨は他人の遺骨と一緒にされてしまいます。
そうならない為に、あらかじめ墓じまいをするのです。
墓じまいをした場合には、お墓に入っていた遺骨はどうするかというと、散骨したり納骨堂へ移動したり、手元供養にしたり永代供養にしたり人それぞれです。
墓じまいで遺骨を整理したらあとはお墓を更地に戻して管理している方へ返却します。
つまり、お墓の引っ越し(改葬)と墓じまいはほぼ同じことを意味しています。
お墓の引っ越しトラブルに関する注意点
お墓の引っ越し(改葬)を行う上で、いくつか注意しなくてはならない点があります。
離檀料
お墓を引っ越すということは、つまりこれまで使用していたお墓との契約を終了することを意味します。
その際に、お寺から高額な離檀料を請求されるというケースがあるようです。
根本的に離檀料というものを支払う必要があるのかどうかも不明確なところがありますが、金額はともかくとして求められるケースはあるようです。
法外な金額を要求されるようであれば法律の専門家へ相談する事も検討した方が良いかもしれません。
ただし、改葬するにあたってはお寺に改葬に必要な書類の記入などをお願いしなくてはならないこともありますので、できるだけ穏便に済ませることがおすすめです。
とりあえず、改葬を検討しているのなら早めに相談をすることが良いでしょう。
親族の意向の違い
お墓というのは先祖代々のものです。
それを自分だけの意見で勝手に移動したり遺骨の一部を持ち出すということは、快く思わない親族が出てきてもおかしくありません。
改葬を行う場合には、親族間でしっかりと話し合いをしておくことが必要です。
永代使用料の返還
改葬でお墓を使わなくなるのだから、永代使用料の一部を返還してもらえるのではと考える方もいらっしゃるようです。
しかし、基本的に永代使用料は返ってきません。
墓石の持ち込み
墓石ごと新たなお墓に移動する場合には、あらかじめ墓石の持ち込みが可能かどうか確認しましょう。
墓地によっては外部からの墓石の持ち込みができないところがあります。
というよりも持ち込みができない墓地の方が多いでしょう。
まとめ
お墓の引っ越し(改葬)を行うには、半年から一年ほどの時間と数百万円の費用が発生します。
さらに、手続きには様々な書類も必要となりますので、計画的に進めることをお勧めします。
ただ、お墓の引っ越しをすることでこれまでなかなかお参りに行けなかったという状況を改善する事ができる、という点が改葬のメリットでもあります。
さらに、お墓の管理状況から墓じまいをして無縁仏になってしまうことを防ぐ事も重要です。
大切なご先祖様や亡くなった親族の方の為に、どうしたら一番喜んでもらえるかを考えて改葬を検討してみてはいかがでしょうか。